相続や贈与、離婚時の財産分与、あるいは事業譲渡や事業承継の場面で、税理士/会計士/弁護士さんから、「不動産鑑定士の鑑定評価書を取ってください」と言われた。
「不動産鑑定士、って???」
当惑される方も多くいらっしゃるのではないでしょうか。
この記事では、知る人ぞ知る!? ”不動産鑑定士”について、徹底解説していきます!
1.不動産鑑定士とは
不動産鑑定士は、国土交通大臣又は都道府県知事の登録を受けた不動産鑑定業者に所属し、不動産の鑑定評価や不動産の客観的価値に作用する諸要因に関する調査や分析、不動産の利用、取引若しくは投資に関する相談に応じる業務を行うほか、不動産会社、金融機関、Jリートの資産運用会社等企業内の不動産関連部門においても専門知識を活用した業務を行っています。
(出典:国土交通省ウェブサイト)
これは固苦しい人たちのようだ…、と思われたかもしれませんが、そんなことはありません!
不動産鑑定士の仕事をわかりやすく
不動産鑑定士は、不動産の鑑定評価を行うことでお客様のニーズにお応えするのはもちろんのこと、不動産に関する様々な相談にも対応できます。
人の生活に密接な関わりをもつ不動産、その大切な不動産について気軽に相談できるプロフェッショナル、それが私たち不動産鑑定士です。
(出典: 公益社団法人東京都不動産鑑定士協会ウェブサイト)
より噛み砕いていえば、「そこにある土地や建物のベストの状態をイメージし、現状とベストの状態の違いがどの程度あるかを判断した上で、依頼者に土地・建物の価格を示すこと、また、アドバイスする」ことが、不動産鑑定士の仕事です。
ベストの状態のイメージを得るため、不動産鑑定士はあらゆる角度から土地・建物の分析を行います。
まず、実際の不動産を見に行き、現況を隈なく点検します。
そして法律関係の調査、市況の調査(不動産マーケットの状況はもちろん、景気動向など広く調べます)と進め、土地・建物が最もその力を発揮している状態を見定めます。
不動産の困った!にお応えできるのが不動産鑑定士です(その1)
不動産の困った!にお応えできるのが不動産鑑定士です(その2)
不動産の困った!にお応えできるのが不動産鑑定士です(その3)
不動産の困った!にお応えできるのが不動産鑑定士です(その4)
不動産鑑定士にはどうやってなるのか
不動産鑑定士となるためには、国土交通省土地鑑定委員会が実施する不動産鑑定士試験(短答式及び論文式による試験)に合格し、かつ、一定期間の実務修習のすべての課程を修了し、さらに国土交通大臣による実務修習を終了したことの確認を受ける必要があります。
(出典:国土交通省ウェブサイト)
不動産鑑定士になるには その① ~2つのステップ
不動産鑑定士になるには その② ~短答式試験
不動産鑑定士になるには その③ ~「不動産に関する行政法規」(短答式試験)
不動産鑑定士になるには その④ ~「不動産の鑑定評価に関する理論」(短答式試験)
不動産鑑定士になるには その⑤ ~論文式試験
不動産鑑定士になるには その⑥ ~「民法」(論文式試験)
不動産鑑定士になるには その⑦ ~「経済学」(論文式試験)
不動産鑑定士になるには その⑧ ~「会計学」(論文式試験)
不動産鑑定士になるには その⑨ ~「不動産の鑑定評価に関する理論」(論文式試験・論述問題)
不動産鑑定士になるには その⑩ ~「不動産の鑑定評価に関する理論」(論文式試験・演習問題)
以下の動画を8分15秒まで見ていただければ、不動産鑑定士の業務内容、試験制度、日常の仕事の様子がまるっとわかります。
「不動産鑑定士になろう!」 (公益社団法人日本不動産鑑定士協会連合会)
不動産鑑定士のリアル
実は、不動産鑑定士は、他の多くの士業とは異なり、学生時代から資格を目指したという人は少ないです。
不動産会社や金融機関を中心に、社会人経験のある方が勉強を始めて資格を取るケースが一般的で、多様な個性が集う業界となっています。
不動産鑑定士になる前のこと(降矢 等)
不動産鑑定士になる前のこと(伊藤由美子)
動画・シリーズ「鑑定士×多様性」 (公益社団法人東京都不動産鑑定士協会)
2.不動産鑑定士による不動産鑑定評価が役立つ場面
不動産の価値評価を専門とする不動産鑑定士は、ご依頼を受けて不動産を評価します。
不動産鑑定士による不動産鑑定評価がどういったときに役立つのかをご紹介していきます。
よく混同される「不動産鑑定」と「不動産査定」の違いについても説明します。
個人の方からの依頼
下記個人の方のニーズを、不動産鑑定士はサポートできます。
・相続税対策や節税のために、贈与や負担付贈与をする
・相続時に公平な遺産分割がしたい
・相続で代償分割をする際に不動産価格を決めたい
・相続で遺留分減殺請求をする
・相続時、特別なマイナス要因がある土地について評価額を下げたい
・親子・兄弟・姉妹など、親族間での不動産売買や、交換をする
・離婚に際して、財産分与をする
・特殊な状況にある不動産の価値が知りたい
・裁判所に証拠として不動産鑑定評価書を提出する
・賃料を下げたい、上げたい
・適正な立退料の額が知りたい
FRAコンサルティングHP:不動産会社様向け鑑定
FRAコンサルティングHP:家賃交渉向け鑑定
FRAコンサルティングHP:相続対策・個人資産鑑定・不動産目録作成
FRAコンサルティングHP:家賃交渉向け鑑定
法人の方からの依頼
下記法人の方のニーズを、不動産鑑定士はサポートできます。
・不動産の時価評価が必要となった(株式・出資の評価、賃貸等不動産、減損会計、債権の評価など)
・役員との間で不動産の売買や交換をする
・所有する土地・建物について、会計上、土地と建物とに分ける必要がある
・不動産を担保とした融資を行う
・現物出資をする
・事業譲渡、事業承継、会社分割、合併の際に、保有不動産がある
・賃料を下げたい、上げたい
・適正な立退料の額が知りたい
FRAコンサルティングHP:不動産会社様向け鑑定
FRAコンサルティングHP:家賃交渉向け鑑定
「不動産鑑定」と「不動産査定」の違い
「不動産鑑定士」と「宅地建物取引士」いずれも国家資格ですが、両者は、
不動産鑑定士・・・不動産の価値(価格や賃料)を客観的に評価する専門家
宅地建物取引士・・・不動産の取引(売買や賃貸)を仲介する専門家
と、専門とする業務が異なります。
「不動産鑑定」を行うことができるのは、不動産鑑定士だけです。
法令や基準に基づいて厳密な計算や分析を行う「不動産鑑定」は、公的な機関や第三者に対して、不動産の価値を証明することができます。
不動産の種類や規模に応じて有料となり、不動産鑑定士・不動産鑑定業者は評価額に責任を負います。
宅地建物取引士ほか不動産業者のスタッフが行う「不動産査定」にはこれら特性はなく、金額は近いものが示されたとしても別ものなのです。
「不動産鑑定評価基準」とはなにか?
不動産鑑定士の責任について
3.不動産鑑定士への依頼手順、発行書面の種類、費用、注意点
ここまでの解説で、不動産鑑定士、不動産鑑定ってなにかわかってきた! 鑑定評価を頼みたい! けど、「不動産鑑定士への依頼って、ちょっとハードル高そう…」という方へ。
不動産鑑定士への連絡から発注まで、ポイントとなる点について押さえていきましょう。
不動産鑑定士への依頼の手順
不動産鑑定士への依頼を考えたら、まず問い合わせフォームや電話で悩みや希望をざっくりと伝えてみましょう。
どういった対応が取れるのか、費用の目安について、鑑定士から回答が得られます。
そして、不動産の状況や評価についてのより詳細な意見や、具体的な評価費用見積りが欲しいときは、物件の資料(不動産登記情報など)を送ります。
多くの不動産鑑定会社はこの段階のやり取りまで無料としています。
対応内容や、費用、納期などに納得できたら、依頼(発注)しましょう。
その後、スケジュールや書面の発行部数など評価進行の具体的な打ち合わせに入っていきます。
FRAコンサルティングHP:ご依頼の流れ
FRAコンサルティング お問い合わせ以後の流れ
「不動産鑑定士」が作成する書面の種類
不動産鑑定士が依頼を受けて行う価格や賃料についての評価は、大きく
①不動産鑑定評価基準に則った不動産鑑定評価
②それ以外の価値評価
とに分かれます。
①「不動産鑑定評価書」
不動産の鑑定評価に関する法律第39条にもとづいて不動産鑑定業者が依頼者に交付する文書で、この文書の作成を法律で認められた資格者が不動産鑑定士です。
②「不動産調査報告書」「意見書」など
依頼目的の達成に欠かせない内容に絞った文書で、コストを抑えつつ鑑定士クオリティの評価額を知ることができます。
①と②のいずれも、不動産鑑定士が、理論的に不動産について評価を行って価値を算定する、という点は同じです。
しかし①と②では、評価における調査・資料収集の範囲や、適用する鑑定評価の手法の数、ご報告書面への記載事項などが異なります。
価値把握の目的、評価にかけられる時間や予算等に応じて、最適な評価形式を選択しましょう。
不動産鑑定士による「不動産鑑定評価」と「鑑定評価ではない不動産評価」
不動産の鑑定書とは?
不動産鑑定士の文章は硬い!?
鑑定評価書の文章はこのようなものです
不動産鑑定士による鑑定の費用相場
不動産の規模や評価内容により幅がありますが、一般に数万円から数十万円程度が相場です。
不動産鑑定士に依頼するときの注意点
不動産鑑定によって公的な機関や第三者に対して不動産の価値を証明することができる一方、鑑定を依頼することには多少の手間や、費用、時間を要します。
信頼が置けるコミュニケーションが取りやすい鑑定士を選ぶこと、依頼前にはしっかり料金や納期を確認することが大切です。
いかがでしたでしょうか。
不動産鑑定士についてもっと知りたい!という方は、どうぞお気軽に、弊社のベテラン不動産鑑定士あるいは女性鑑定士にご質問をお寄せください。