Monthly Archives: 12月 2017
こんな言葉があるそうです・・・「寝た子をおこす、地籍調査」
重ねて申し上げますが、地籍調査は社会的意義ある事業です。
個人の立場から地籍調査をみると、通常は個人の手間と費用によって行わなければならない隣地との境界確認や土地実測が、公による人的・費用的なサポートを受けて実現する、というのはメリットです。
その一方で「寝た子をおこす、地籍調査」が示唆するリスクはというと…
これまで様子見していた隣地との境界争いに向き合わざるをえなくなった末に決着がつかない、自身や隣人が測量結果の面積に納得できない、隣地所有者の境界確認立会が得られない、といった問題が地籍調査の過程で発生し、この解決がかなわず、最終的に「筆界未定」の扱いとなってしまうことです。
土地の境界が定まっていないと、不動産の利用や処分に不利益が生じます。
・相続・贈与・売買のために分筆登記したくても、原則として出来ない。
・後日、境界を決めようとするときは、隣地所有者の承諾取り付けや手続き費用の負担が生じる。
・抵当権の設定が難しい。
このような状況から、筆界未定地は売却したくてもなかなか買い手がつかなくなり、資産価値の低下が避け難くなります。
個人がデメリットを被るだけでなく、筆界未定地となった土地を公共事業用地とする際に事業期間やコストに負の影響が生じてしまった事例も、各地で見られています。
筆界未定の回避には、土地所有者お一人お一人が実際に地籍調査の連絡を受ける前に、地籍調査を知り理解を深め、地域として地籍調査実施に前向きな機運が広がっているという状態が一助となるかと思います。
国土交通省は、地籍調査webサイト という情報サイトを立ち上げています。
サイト内の「まんが地籍調査」 は、地籍調査の全体像をまず掴むためにおススメです。
当ブログシリーズと併せて、是非上記サイトもご覧になってみて下さい!
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地籍調査では、市区町村等によって測量が行われます。
世田谷区地籍調査ご担当のSさんのお話を総合し、この測量作業について以下整理してみます。
<観測値を求める>
地籍調査の工区を面的に観測し、全体の面積を求めます。
これには「座標」が用いられます。
「座標」とは、緯度および経度に関連した位置情報で、GPS衛星を利用した高精度の測量技術により求められます。「座標」を土地の各境界点に設定することで、地球規模で位置の特定が可能となります。
<計測値を求める>
土地所有者立会いで確定された境界に基づき、不動産登記簿に登記されている土地ひと筆ごとに、最新の測量技術で計測を行い、一筆ごとの面積を求めます。
<観測値と計測値を調整し、面積を決める>
面的に工区を観測した値に対して、筆ごとの計測値を積み上げた工区全体の値には、どうしてもズレが生じます。このズレを工区内の筆それぞれに割り振る調整を行って、地籍調査による面積を決めます。
測量の精度区分には段階があり、都市部ではミリ単位の一番厳しい設定となっています。
以上の測量手順を踏まえますと… 土地所有者がこれまで登記簿面積あるいは実測面積として認識していた面積と、地籍調査によって求められた面積とが一致することはまずない、程度の差はあれ必ず数値にズレが生じる、という結論になります。
地価の高い都市部では、資産価値を左右する主たる要因である土地面積には敏感になるのが当然です。
しかし、計測手法によって生じる「面積のズレ」の受け入れを拒みハードルの前で立ち止まる所有者が出てこられると、次回にお話する地籍調査最大の問題「筆界未定」へとつながっていく可能性があります。
冷静な理解と判断が必要です。
Sさんによれば、調査結果の面積提示当初、製作年の新しい地積測量図をお持ちの所有者の方からは、ズレに納得がいかない…との疑問が多く出るそうです。
そこで「作成当時には正しい図面です」とお伝えした上で、上記内容を丁寧に説明し、土地所有者の方のご理解へとつなげていらっしゃるとのことでした。
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不動産鑑定士・伊藤由美子です。
前回まで5回のブログで、地籍調査の制度や状況を概観してまいりました。
今回からは、都市部(東京・世田谷)の地籍調査の実際を、お伝えしたいと思います。
(2016年度末時点・国土交通省調査)
世田谷区で地籍調査実施済み・実施中の地域は、左図の赤く色付けされた地域です。
(2017年度4月時点・同省調査、図は同省HPより)
先日、世田谷区役所にて地籍調査を担う道路・交通政策部の方とお話する機会をいただきました。
お時間を取って下さったSさんは、私の自宅周辺の工区のご担当者でした。
Sさんの根気強いお取り組みのお陰様で、「筆界未定※」になるという地籍調査が実施で生じる最大のリスクが工区全体についてクリアされました。
※「筆界未定」については、追って別のブログ項目を設けて詳述いたします。
Sさんに伺った世田谷区の地籍調査事業の概要は以下のとおりです。
・現在3工区が実施中。これを専任・兼任含めて5名の職員の方で担当している。
・平成16年度に若林5丁目地区に着手し事業スタート。平成28年度末で調査対象区域の2.7%が完了となる予定。
・地籍調査実施地域は、区役所周辺、外環道周辺で選定されたというわけではない。若林5丁目地区の隣接地へと広げる一方、若林エリアと地域性が違うところとして大蔵エリアが設定されたと聞いている。
次回からは、地籍調査の実施で私たちの前に立ちはだかる二つのハードル、「面積のズレ」「筆界未定」 の話へと進めてまいります。
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都市部での地籍調査には、特有の難しさがあります。
◆都市部で地籍調査が進まない理由◆
① 調査に費用や時間がより多く必要
都市部では他の地域と比べ、一筆ごとの土地が細かく分割されており、小さな土地が数多く存在しています。
また、土地に関する権利関係が複雑な場合が多く、境界の確認に困難を伴う場合が多くみられます。
さらに都市部では土地の売買等に伴った所有権等の異動も多く、この結果、都市部は他の地域に比べ、調査の実施には多くの費用と期間が必要になっています。
② 土地の資産価値が高く境界確認に時間を要する
都市部では土地の資産価値が高いこともあり、土地の所有者等の権利意識が強く、境界の確認に非常に多くの時間を要しています。
③ 住民の立会等の調査への協力が得られない場合が多い
都市部の住民には、トラブルにつながらないよう隣人との接触をできるだけ避けたいとの意識が強くみられます。
このため特に民有地間の境界に関する調査について、現地での立会い等の調査への協力を得られない場合が多く見られます。
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社会的意義の大きい地籍調査ですが、進捗ははかばかしくありません。
1951年の調査開始から65年超を経て、国全体の進捗率は52%にとどまっています。
特に、山村部(林地)は45%、都市部(人口集中地区)は24%の進捗で、取り組みの遅れが目立ちます。
(2016年度末時点)
地籍調査が進まない理由については、国土交通省が詳しい分析を行っています。
その内容に基づき、山村部と都市部に分けて見ていきたいと思います。
(参考: 国土交通省 地籍調査Webサイト ~地籍調査が進まない要因)
◆山村部で地籍調査が進まない理由◆
① 登記所の図面の精度が悪い
山村部では、登記所に備え付けられている図面が精度上問題のある昔の図面を基にしている場合が多く、現状と大きく異なっているなど、地籍調査を実施する場合の基礎資料として使用することが難しい場合が多くあります。
② 調査の優先度が高くならない
山村部は、他の地域と比べれば土地取引等が少ないにも関わらず、地籍調査を実施するためには一定の費用と手間がかかることから、山村部を優先的に調査を実施しようという市町村内の気運が高まりづらい状況です。
③ 調査が困難な地域が存在
山村部には、急傾斜地など危険な箇所や、山奥で容易にはたどり着けない箇所などもあり、測量や調査を実施することが困難な地域が存在します。
④ 土地所有者等の高齢化等の進行
山村部では、土地所有者等の高齢化や不在村化が他の地域と比べて著しく進行しており、またこれに合わせて山林の荒廃も進んでいることから、土地の境界の確認に必要な人証や物証が失われつつあります。
このため、地籍調査を円滑に実施することが困難になってきています。
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地籍調査は、「一筆ごとの土地について、その所有者、地番及び地目を調査し、境界及び面積に関する測量を行い、その結果を地籍図及び地籍簿に取りまとめる事業」です。
国土調査法という法律にもとづき、市区町村などが調査主体となって行われます。
国土調査全体での地籍調査の位置付けは、下記のとおりです。
国土調査─┬─ 地籍調査 ・・・土地の各筆ごとの境界、面積、
│ │ 所有者、地目及び地番の調査
│ ├ 基準点測量
│ ├ 地籍調査
│ └ 公共事業等確定測量の国土調査に準ずる指定
│
├─ 土地分類調査 ・・・土地の利用状況、
│ │ 自然的要素及び生産力の調査
│ ├ 土地分類調査
│ ├ 土地分類調査(細部調査)
│ └ 土地保全基本調査
│
└─水調査 ・・・水文、水利等の調査
├ 水基本調査(地下水調査)
└ 水系調査
市区町村が地籍調査を実施する場合、その事業費は国が1/2、都道府県と市町村がそれぞれ1/4ずつ負担するのが原則です。住民の個人負担はありません。
地籍調査が実施されて土地境界や面積が明確になると、公共事業や民間取引・事業が円滑になります。
土地に関係する課税が適正化され、万一の災害発生時には復旧が迅速にできます。
通常、土地取引等の際に古い登記簿面積の資料しか手元にない場合、正確な面積を知るには、取引当事者が、測量にかかる費用を自己負担して土地の実測や隣地との境界確認を行わなければなりません。
地籍調査では、測量費用が公負担です。また、隣地との境界確認を第三者たる行政に取り仕切ってもらえます。
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地籍調査について第2回目のブログです。
前回ブログで、「それぞれの土地の面積と境界をはっきりさせて、正確な地図をつくること」
が、地籍調査のゴールだとお話しました。
これも前回触れましたが、地籍調査が終わると、登記所に結果が送られ、不動産登記簿が書き改められて地籍図という図面が備え付けられます。
なぜ 地籍図=正確な地図、をつくらなければならないかと言うと…
実は、地籍調査が未了の地域(全国の約50%)では、その多くで明治時代の地租改正当時の情報に基づいて作成された不動産登記簿や地図が今に至るまで使われ続けています。
そのため登記簿記載の土地面積が正しくなかったり、図面に記載されている土地の位置や形が現実と異なる場合があるのです。
皆さまは、登記所にある土地の登記簿や、土地の位置や形状を示す図面を見たことがおありですか?
少し古いデータとなりますが、国土交通省が2009年に全国の満20歳以上の本人もしくは配偶者が土地を所有している人・1,008人のアンケート回答を取りまとめた結果では、「見たことがある」と答えた方は6割弱(58.5%)でした。
さらに、同じアンケートで、「登記所にある土地登記簿・地図のおよそ半分は明治時代の古い情報に基づいていると知っている」と答えた方は、わずか2割強(22.5%)にとどまりました。
日常の暮らしでは気付きにくいですが、登記された情報が不正確であることは、土地取引の際にトラブルが起きたり、官民の事業が滞ったり、災害が起きたときに原状回復が難しくなったり、と、様々な不都合につながっていきます。
こういった不都合の解消が、地籍調査の目的です。
2018年に弊社は開業20年を迎えます ↓
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不動産鑑定士・伊藤由美子です。
いよいよ師走に入りました、早いものですね!
慌ただしい時季ですが、本日よりしばらく腰を据えて「地籍調査」についてお伝えをしてまいります。
地籍調査とは、国および地方公共団体によって行われる土地の調査です。
国土調査法という法律に基づき、土地を一筆ごとに測量し、面積や境界を明確にしていきます。
2014年から2017年まで、私はこの地籍調査を経験いたしました。
具体的には…
所有する土地が地籍調査の対象工区に入ったとの連絡を受けたとき、私たちは境界の確認に立会います。
その後、測量結果の図面を閲覧・確認(必要な場合は訂正)します。
工区全域の地籍調査が終わると、登記所に結果が送られて、不動産登記簿が書き改められ、地籍図という図面が備え付けられます。
それぞれの土地の面積と境界をはっきりさせて、正確な地図をつくること。
これが地籍調査のゴールです。
この地籍調査は、東京の都市部ではわずか10.3%しか進捗していません。
(2016年度末時点・国土交通省調査)
世田谷区で地籍調査実施済み・実施中の地域は、左図の赤く色付けされごく限られたエリアです。
(2017年度4月時点・同省調査、図は同省HPより)
私の居所周辺の地籍調査は、事業予定期間は2年とされていましたが、実際には3年がかりとなりました!
地籍調査の社会的意義は大きいものの、私たち土地所有者ひとりひとりの制度理解と、行政ご担当者の熱意なくしてはスムーズに進まない事業だと身をもって知りました。
開始から終了までの3年間の心境を振り返りますと…
当初は状況がよく飲み込めずに戸惑い、境界立会いのヤマを越えたあとにはヤキモキ、そして無事事業が完了した今は世田谷区ご担当者のひとかたならぬご尽力に深く感謝しております。
地籍調査について予備知識があれば、もう少し心穏やかでいられたのかもしれません。
そんな思いより、はじめて地籍調査という言葉を聞いた、地籍調査の区域となって驚いている、といった方々にお役立ていただけるよう、次回より順を追って地籍調査の概要と体験談をお届けしたいと存じます。
どうぞお付き合い下さいませ。
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