Monthly Archives: 5月 2015

FRAの伊藤由美子です。

オーナーから立退きを請求され、立退料について争うことになった、D社のストーリーの続きです。

 

【 借家権価格 】
~借家権の価格の算定は、以下のように行ったそうです~

 

「借家権」とは、借地借家法及び旧借家法が適用される建物の賃借権をいいます。

 

例えば「借地権」など売買の対象となる他の不動産の権利で、取引市場で価格がつく場合には、市場性や収益性からアプローチして価格を求めますが、「借家権」は通常、売買の対象とはならず、取引市場はありません。ですから、価格を形成する要因は他の不動産の権利の場合とは異なってきます。

 

 

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「借家権」の価値は、賃貸人から一方的な建物の明渡し請求を受け、借家人が不本意な立退きを余儀なくされて事実上喪失する建物占有権をはじめ、借地借家法をはじめとする法令等によって保護されている借家人の社会的、経済的あるいは法的利益で形成されていて、賃貸人が補償するべき借家人の喪失利益として認められます。

 

 

 

したがって、今回の借家権の評価においては、補償原理の観点に立って喪失する借家権の適正な経済価値を把握するため、客観性を備えていて最も一般的に用いられている
●権利割合法
という手法を適用して行いました。
なお、賃借人が事業を営むために正当に占有してきた不動産を、賃貸人からの一方的で正当事由を欠いた立退き要請を受けたことにより退去する場合、このために生ずる営業上の損失等については、借家権の喪失補償とは別に「営業損失」等として扱います。

 

賃貸人はこれも併せて補償することになりますが、D社様のケースの「営業損失」等については、これから説明します。

 

 

<次回に続く>

 

 

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引き続き、不動産鑑定士・伊藤由美子です。

オーナーから立退きを請求され、立退料について争うことになった、D社のストーリーの続きです。

 

【 立退料の構成要素 】
~不動産鑑定士は、まず、私たちのケースでの立退料の構成要素について話しました~

 
File 000888D社様は、過去20年間に亘り、こちらのビルの5階・6階を、事業を営み継続的な使用収益を得る目的で、不動産賃借権に基づいて現在まで占有してきました。
しかし、この度、特段の正当事由が認められない賃貸人より、一方的で、D社様にとって不本意な建物立退き請求を受け、提訴されるに至りました。
D社様は、立退きが現実となった場合に被るであろうと予測される不利益を総計し、賃貸人に対して「補償」という形で金員を要求するべき立場です。
そこで、評価のご依頼を受け、私どもは客観的な視点から適正な「立退き請求に相応する補償額」を算定いたしました。

 

 

D社様の事案で算定する「立退き請求に相応する補償額」の積算構成は、次のとおりとなります。

 

【A】 借家権価格

【B】 営業休止・移転に伴う立退料

① 移転費用の補償
② 営業補償(= a.休止補償 + b.得意先喪失補償 )
③ 雑費の補償

 

 

<次回に続く>

 

 

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不動産鑑定士・伊藤由美子です。

オーナーから立退きを請求され、立退料について争うことになった、D社のストーリーの続きです。

 

【 「調査報告書 -立退き請求に相応する補償額算定- 目次 」 】

 

不動産調査報告書

不動産調査報告書

 

現地調査の日から3週間後、「調査報告書」が完成し、鑑定士からの内容説明の日を迎えました。

分厚い「調査報告書」は以下の目次から始まっていました。いよいよ説明開始です。

 
◆ はじめに ◆

■Ⅰ.調査評定額■

■Ⅱ.調査対象不動産の表示■

■Ⅲ.調査評定の基本的事項■

1.不動産の権利の種類及び種別・類型
2.対象不動産の確定
3.価格時点
4.調査評定の依頼目的
5.価格・賃料の種類
6.調査評定を行った日付
7.利害関係と縁故関係の有無とその内容

■Ⅳ.調査対象不動産の確認■

1.物的確認
2.権利の態様の確認

■Ⅴ.調査評定額決定の理由の要旨■

1.価格形成要因の分析
2.近隣地域の状況
3.調査対象不動産の状況
4.一棟の建物とその敷地及び環境との関係
5.一棟の建物及びその敷地の最有効使用
6.調査対象の建物賃貸借契約の概要
7.借家権の喪失及び賃借人の企業経営状況等に基づく適正な補償額算定の手順

■Ⅵ.借家権の評価■

□ 権利割合法による借家権価格
1.原価法による土地・建物の基礎価格
2.権利割合法による調査対象不動産の借家権価格

■Ⅶ.立退き請求に関する営業補償■
1.営業補償を行う場合の補償方針
2.営業休止(移転)を前提とした補償費の算定

■Ⅷ.調査評定額の決定■

■Ⅸ.付記事項■

◇添付資料一覧◇

 

 

<次回に続く>

 

 

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不動産鑑定士・伊藤由美子です。

オーナーから立退きを請求され、立退料について争うことになった、D社のストーリーの続きです。

 

【 ヒアリング 】

 

調査のあと、会議室で、私は鑑定士からの質問に答えました。

 

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会社概要、過去3年間の損益計算書など、あらかじめ言われていた資料を用意しておきました。

 

それらの内容の確認に加えて、電気・ガス・水道・電話・LAN等の基本料金や、従業員の数とその雇用形態、人件費の雇用形態別内訳、顧客の数や取引の状況など、細かな経営状態のヒアリングがありました。

 

 

 

その後、鑑定士は、社長にこれまでの事業の推移や今後の方向性に関するヒアリングも行っていました。

 

私は、立退料というのは、土地や建物のみ見て決まるものと思っていましたが、イメージが変わりました。

 

 

<次回に続く>

 

 

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不動産鑑定士・伊藤由美子です。

オーナーから立退きを請求され、立退料について争うことになった、D社のストーリーの続きです。

 

【 現地調査 】

 

先日の打合せで、「不動産調査報告書」という書面で立退料を算定してもらうことが決まりました。

 

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打合せの4日後、現地調査に、不動産鑑定士が再び会社を訪れました。
案内役は私です。

 

鑑定士は、建物各所の状態から、オフィス家具・OA機器の数や設置時期まで、確認し、写真に収めていきました。

 

 

外部も、様々な角度から見て回り、ビルの間口の幅や、道路の幅も、資料と照合を行っていました。

 

面白いと思ったのは、縁石のカウントです。
このビルの前の縁石は、1つの幅が60センチなので縁石の数を数えれば、間口を確認することができるのだそうです。

 

 
<次回に続く>

 

 

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不動産鑑定士・伊藤由美子です。

オーナーから立退きを請求され、立退料について争うことになった、D社のストーリーの続きです。

 

【 弁護士と不動産鑑定士 】

 
今日は私が参加する初めての打合せです。

社長、部長、私の待つ会議室に、顧問弁護士が入ってきました。

 
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訴訟の代理人となる顧問弁護士は、まず、今後の予想される裁判所とのやり取りを説明しました。
そして、こちらの主張の根拠資料として、不動産鑑定士による立退料の評価書面を中心に据えると言いました。

 

 
担当する不動産鑑定士は、今、こちらに向かっているそうです。

 

不動産鑑定士という職業があるのですか、と、私が口にすると、弁護士は、
立退きだけでなく、家賃や地代の案件、過去の不動産取引についての争い、M&Aの折など、よく鑑定を依頼しますよ、と教えてくれました。

 

しばらくして、不動産鑑定士が到着し、部長から私は今回の訴訟の窓口であると紹介されました。

 

鑑定士が加わって、打合せはさらに続きました。

 

 
<次回に続く>

 

 

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不動産鑑定士・伊藤由美子です。

今回のブログシリーズでは、不動産鑑定士が行う立退料評価について、D社のストーリーを用いてお届けいたします。

(このストーリーは、弊社が扱わせて頂いた実例を、個人情報に配慮し改変しております。)

 

【 D社、訴えられる 】
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初めまして。D社に勤務し、5年になる山本と申します。
D社は、人材採用コンサルティングの会社で、社員のうち30名ほどがコンサルタントです。
私自身は新卒での入社以来、ずっと総務部に勤務しています。

 

 

後輩も入り、総務の仕事に自信が持てるようになってきた折、部長から思いがけない話がありました。
会社が、入居しているビルを所有する不動産会社に退去を要求され、訴えられているというのです。

 

寝耳に水で驚きました。

 

部長は、実は社長と共に過去数ヶ月の間不動産会社と交渉を続けていたそうです。
しかし話はこじれ、ついに訴訟に至ったとのことでした。

 

東京東部のD社のあるこのエリアは、交通アクセスの良さや歴史的・文化的魅力が最近の若い世代を捉え、注目を浴びるようになってきています。
この流れに乗り、建物はまだ十分使用できる状態であるものの、不動産会社は建替えによって収益性を高めたい意向です。

 

しかし、我が社は20年前の創業時からこの場所で営業を続けていて、事務所移転は会社としてこれまで考えたことがなく、私たちにとって移転は大きな負担です。
地下鉄駅にほぼ直結した現在の事務所立地は、社員にとってもお客様にとっても便利で、代えがたいものがあります。

 

平行線を辿るばかりの交渉で、不動産会社との関係は悪化し、社長は退去自体はもはややむを得ないとの考えです。
不動産会社が提示している立退料は1,200万円。
これは、こちらの移転による不利益からすれば到底受け入れ難い金額で、立退料について争うことになるとのことです。

 

私は、部長の下で今回の訴訟の実務を担当することになりました。

 

 

<次回に続く>

 
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こんにちは! FRAコンサルティングの不動産鑑定士・伊藤由美子です。

 

ブログシリーズ「Cさんのストーリー」で老朽店舗の立退料についてお伝えしてきましたが、新シリーズは、意に反して立退き請求を受けたD社のストーリーを用いて、事務所の立退料のケースをご紹介したいと思います。

 

D社へ舞台を移す前に、ここで「立退料」とは何か、について改めて確認しておきましょう。
「立退料」とは、オーナー側の事情等で、賃貸借契約が結ばれている土地や建物をテナントから明渡してもらう必要がある場合に、オーナーからテナントに対して支払われる金銭です。

 

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「立退料」の内容は、次の3つに大別することができます。

①立退きによってテナントが支払わなければならない移転費用の補償

②立退きによってテナントが事実上失う利益の補償(いわゆる居住権、営業権)

③立退きにより消滅する利益権の補償(いわゆる借地権・借家権)
以上のうち①②は、「通損補償」、③は「権利補償」と呼ばれて区分されます。

 

 

①~③の具体的な内容は以下のとおりです。

 

①テナントが支払わなければならない移転費用の補償

-引越しにかかる費用(梱包、運送、保険、分解取付調整、住所変更諸届、移転通知費用等)

-移転先取得のために支払いを要する費用(敷金、権利金、保証金、仲介料等)

-従前賃料から移転先において増加した賃料差額  など

 

②テナントが事実上失う利益の補償(居住権・営業権)

-居住権の補償…ただし、この権利は精神的な要素を含むため、一定の算定式により金額を出すことは一般に困難。

-営業権の補償…算定可能(移転先で従前営業と同一内容の設備で営業開始するための費用、休業期間中の損失、新規営業による減収分の補償 等)

 

③消滅する利益権の補償(借地権・借家権)

-鑑定評価手法等を用いて算定。

 

 

<参考資料>大野喜久之輔・ 仲肥照暁・嶋田幸弘『転換期にある借地権・借家権の評価と補償』住宅新報社、2011年

 

 

以前のブログで書きましたように、オーナーとテナントが、賃貸借中の不動産について抱える事情は様々です。

その事情を十分に聴取・分析して、上記①~③の内容と照らし合わせ、適正な金額を求めていくのが立退料の評価です。

 

 

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前回<その2>の続きです、代表鑑定士・降矢等です。

 

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収益不動産の価格高騰は、キャップレート(CR)の大幅な低下がもたらしたものとお話しました。たとえば、1年以上前のAクラスビルのCRは概ね4%台前半と把握していましたが、各調査機関や外資系投資会社の担当者によれば、現在は3%台前半で捉えているようです。

 

CRの値は、0.1%違うだけで、資本還元した価格は数%程度異なります。したがって、CRが1%下がれば収益価格は相当な比率で上昇します。

 

 

 

たとえば、純収益1,000万円の収益不動産を例に、CR4%と3%の場合で比較してみると、

1,000万円 ÷ 4% = 2億5,000万円、1,000万円 ÷ 3% = 3億3,333万円となり、CRが1%下がることでこの場合の収益価格は約33%上昇します。

 

しかし、予測可能なスパンで将来を考えた場合、収益価格の大幅な上昇に見合うほどの増収、つまり実質的な家賃上昇が見込めるのでしょうか。もちろん、投資市場では競り勝った者が物件を取得するので売買価格は相対的に高額となる傾向があります。仕入れサイドとしては少々無理をしてでも高額の札を入れることが少なくありません。現在の投資市場を見ても活況を呈していますのでCRの低下傾向は必然のことと思いますが、過熱気味な市況にやや疑問符が浮かびます。

 

アベノミクス効果もあって日経平均株価も2万円前後に達し、景気は回復基調にあるとは思いますが、実体経済が回復したと言うにはまだ早いです。仕入れサイドとしては、だからこそ今のうちに少々無理をしてでも欲しい、、と考えているかもしれませんが・・・

 

 

皆さんは、如何お考えでしょうか。

 

<この項終わり>

 

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代表鑑定士・降矢等です。

 

なぜ、収益不動産(投資用物件)の取引価格が高騰傾向にあるのでしょうか<その1の続きです>。

 

File 000057もちろん、様々な要因が複合しているわけですが、賃貸マンションをはじめ、店舗やオフィスの家賃等に目立った上昇がない以上、前回の<その1>でお話しました③還元利回り、つまりキャップレートが実質的に大きく下がったから、ということになります。

 

このキャップレート(CR:ネットの資本還元利回り)は、簡単ですが次のように表すことができます。

CR = 超低リスク投資金利 + (a.不動産投資による将来的なリスクプレミアム - b.増収益に対する期待性など)

 

 

たとえば、都内有数のオフィス街にある投資用不動産を考えた場合、稼働率の向上などで緩やかな家賃増収はあるとしても将来的に大幅な家賃上昇が見込めると考えるには議論に大きな余地が残ります。

 

つまり、CRが低下傾向にあると見る主な考えとしては、デフレ懸念の解消から投資マインドが改善されたことや、円安により海外投資家の市場参入が増大したことなどから、上式のa値が下がり、b値が上昇傾向にあると思われるからです。

 

このような市況の変化などから、収益不動産の価格は上昇していますが、私が申し上げたいのは、というより心配していることは不動産価格の高騰ではありません。

 

<次回に続く>

 

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