FRA・伊藤です。
2017年は3年に1度の固定資産税評価がある年。
例年にもまして、FRA鑑定士一同はバタバタとした冬を過ごしました。
『湾生回家』という台湾のドキュメンタリー映画について、池田と私で盛り上がりました。
(忙中閑あり(笑)。二人それぞれ、冬のうちに劇場鑑賞に出掛けていました。)
『湾生回家』は、終戦前の台湾に生まれた「湾生」と言われる日本人の方々の、望郷の念をすくい取った台湾のドキュメンタリー映画です。
以下、公式サイトから引用します。
敗戦によって台湾から日本本土へ強制送還された日本人は、軍人・軍属を含め50万人近かったと言われています。
彼らの多くにとって、台湾は仮の住まいの土地ではなく、一生涯を送るはずの土地でした。
しかし残ることはできず、その願いはかないませんでした。
そこで生まれ育った約20万人の「湾生」にとって、台湾は紛れもなく大切な「故郷」でした。
しかし、彼らは敗戦という歴史の転換によって故郷から引き裂かれ、未知の祖国・日本へ戻されたのです。
戦後70年という長い年月を経るなかで、かつて20万人と言われた「湾生」が高齢化して、「湾生」が忘れ去られようとしている現在、台湾の人々の心とまなざしで、彼らの人生を、引揚者の想いを記録しました。
子ども時代を過ごした土地は、その人が生涯忘れ得ぬ、かけがえのない存在となる。
土地が人間にとっていかに深い意味を持つ存在であるのか、ジーンと胸に響く、素敵な映画でした。
映画への感想からさらに話は広がって、台湾好きな池田が、ブログで台湾をテーマにいくつかお伝えすることを決定!
…したところで、有難いことに、ボリュームのある評価案件をいただき、降矢・池田両名が、各地を飛び回ることになりました…
池田の執筆が終わるまで、次回からもいましばらく、私のブログにお付き合い下さいませ。
鑑定士にとって映画からの学びは多いと感じています↓
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4月も半ばにさしかかり、桜が楽しめるのもあと少しですね。
華やかに枝を広げる桜の木には、ちらほらと元気な若葉が姿を見せ始めていました。
さて、春といえば子どもたちの入学・進級。
我が子の入学・進級といえば親にとってはPTA。(ちょっと強引な連想…^_^;)
昨年度、私は子どもの通う小学校でPTA役員を務め、先日次の方へとバトンタッチをしたばかりです。
活動を通して様々な発見・経験がありましたが、地域活動の中心の場としての学校の重みを体感できたこともその一つでした。
住宅(宅地、戸建、マンション)需要者のうち、子育て層の場合は学区を考慮要因とする方が少なくありません。
販売チラシでも、「人気の〇〇小学校の学区です!」などとよく謳われています。
では、”学区”の色を決めるもととは…?
授業やクラス運営は重要ですが、公立校の先生方はローテーションで入れ替わります。
となると、学区の特色の決め手は、そこに通う子どもたちを育てる親であり、見守る地域の方といえるのではないでしょうか。
学校を拠点に展開されるPTA活動には、親と地域の住民・事業者が手をたずさえる場が多々あります。
そうしたPTAの活動内容やその頻度、運営スタイル等は、学区の評判につながります。
ゆえに、ある学校のPTA活動は学区内の不動産価値に影響する…!?
子どもたちのためのみならず、ご自宅を所有される方にとっては資産価値の維持向上にも、PTA活動が役立つとしたら、PTA活動にお悩みの方のお心が少し安らぎますでしょうか。
地縁のないエリアで居住用の不動産を購入なさる方は、学区の小・中学校のPTA活動について情報収集し、地域を知る一助となさってみて下さいませ(^_-)
不動産価値の将来見通しについてのアドバイスもいたします↓
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鑑定評価は、Gさんのお役に立ったでしょうか…?
【 弁護士来訪とユーカリキャンディ 】
会社の入口ドアが開き、明るい女性の声が室内に響きました。
「千葉のほうの仕事があったので、ちょっとこちらにお邪魔して、例の財産分与の案件のご報告をと思いまして」
私は、わざわざありがとうございます、どうぞこちらへ、と中へご案内しました。
鑑定評価書を提出してから、2ヶ月ほど経っていました。
「相手側からは、10億円ちょっとの鑑定評価書が出て、それぞれの評価書を精査し、協議しました。そして最終的に、ご自宅は13億円の現在価値ということで、財産分与を進める話でまとまりました。
オーストラリアのGさんは、問題が解決してとてもハッピーとおっしゃって、お世話になった方々に、と昨日Gさんから小包が届きました」
そういって彼女は、鞄から、キャンディの袋をテーブルに出しました。
「こちらFRAの皆さまに。ユーカリキャンディだそうで。スーッとして、花粉症や喉のイガイガに効くみたいですよ」
ユーカリキャンディ!?初めて目にします。
秋の花粉に悩まされる私にはちょっと嬉しいプレゼントです。
鑑定評価を通じての様々な出会いに感謝し、これからもお困り事の解決に尽くしたいとの思いを胸に、優しい色のキャンディを口に入れました。
<この項終わり>
財産分与に関係する評価の実績豊富です↓
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複数の試算価格(鑑定評価手法を適用して求められた価格)を求め、それらを調整することで鑑定評価額を決定します。
【 積算価格と収益価格の開差 】
現地・役所調査を終えて、主担当の鑑定士は評価書の作成を着実に進めていきました。
そして、評価前打合せから1週間経って、私たちは再びミーティングテーブルを囲んでいました。
「やはり、事例がなく、取引事例比較法は適用を断念せざるをえませんでした。そして原価法による積算価格と収益還元法による収益価格の間には、大きな開差が出てしまって…」
評価書を鑑定評価額決定の直前まで書き上げ、担当鑑定士は悩ましい表情です。
なるほど。収益価格は、積算価格の半分少し、かなり低い金額で出ています。
それぞれの手法の評価過程が正確であるかを確認して、私は言いました。
「高級住宅のみならず一般住宅も含めて、戸建住宅を賃貸物件とした場合の収益価格が土地・建物それぞれの現在価値を積み上げた積算価格に対して相当低位の額となることはよくあります。期待される収益性が低いものだから、そうなって不思議はない。
高級住宅の市場参加者の実態を考えてみましょうか。この不動産の需要者として、収益獲得を目的とする投資家は考えづらく、自己居住用としての住宅取得を目的とする実需者たるエンドユーザー、もしくは転売を目的とする不動産業者。
そうだとすると、市場価格は、対象不動産の収益性を反映する収益価格ではなく、居住の快適性やステイタス性を反映した積算価格が軸となっていきます。
この分析をふまえ、鑑定評価額は、収益価格は積算価格の検証的位置付けとして捉えて、積算価格を標準に決定しましょう」
鑑定評価額は、14億8,000万円となりました。
<次回に続く>
分かりやすい説明を心掛けています↓
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デスクワーク → フィールドワーク → デスクワーク が、不動産鑑定士の基本動作です。
【 机上調査と実査準備 】
私が話した内容について、担当鑑定士は詳細なメモを取っていました。
そして、いくつかの質疑応答のあと、打合せは小一時間ほどで終わりとなりました。
自席に戻った担当鑑定士は、月曜日の現地・役所の調査に向けて、早速机上調査を始めます。
デジタルカメラの準備にも余念のない彼に、
「できるだけ色々な角度からの外観写真を撮っておいてね、昼過ぎ内覧前には私も現場に入るから」
と声を掛けました。
<次回に続く>
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富裕層の思考を理解して、鑑定評価に反映します。
【 高級住宅、建物の市場性の考え方 】
高級住宅のマーケット分析や、土地評価で持つべき視点について、ここまで話してきました。
次は、今回の評価対象「特に名高い高級住宅地にある築7年の住宅」の、建物評価で迷いそうな点についてみていきます。
高級住宅と言えば、広い床面積を持ち、デザイン、部材、施工、それぞれの質にこだわった住宅というイメージがまず浮かびますね。
内部を歩けば、充実した設備や造作家具があることに加えて、照明や空調にも配慮が行き届き、坪庭やウッドデッキが設置されているかもしれない。
築7年だと、まだ十分に使用可能な状態のはずです。おそらく建物の基本的なところは残し、別途費用をかけてリフォームというか、リノベーションによって大幅改造することを前提に購入を検討する方が多数を占めるでしょう。
ただ、今回は「超」高級住宅と言っていいレベルの物件で、いくら資産価値ある高級資材が使われていても、人によってはそんなことは関係なく、自身の意匠にこだわり、気に入らないから解体して新築する、という場合があるかもしれません。
ステイタスを誇る高級住宅の購入を考える層は、桁違いの資力があって、個性を何より大切にするという方が多い点も特徴だから…
こういったことを踏まえると、築浅の中級・普通住宅であれば、こだわりが過ぎた設備・仕様の中古物件は、使い勝手の問題やランニングコストが余計にかかることから、市場性をマイナスに見て市場性減価をする必要があるけれど、超高級住宅については、前提が異なるため、通常はこの点について減価の必要はないと言えます。
<次回に続く>
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高級住宅地域=画地にゆとりある住居専用地域 です。
【 高級住宅評価のポイント ③重視される要因:画地の状態 】
最後に、対象地とその周辺の各画地の面積・配置・利用の状態について。
高級住宅地では、画地の標準的規模は300㎡以上あり、区画整然とした配置となっています。
また、一戸建がほとんどで、共同住宅があったとしても低層のグレードの高いマンションで、アパートや店舗はまず見られない。
このような特性によって、快適性と品位が維持されているのです。
なお、もし嫌悪施設、例えば火葬場のようなものが近くにある場合には、住宅地の快適性に悪影響を及ぼすけれど、特に高級住宅地では市場価値を損なうことになるので、嫌悪施設の有無はしっかりと確認して下さい。
<次回に続く>
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品位ある街に、緑は欠かせません。
【 高級住宅評価のポイント ③重視される要因:自然環境 】
二つめは、眺望・景観など、自然環境の良否です。
近くに大規模な公園があるなど、眺望が開けていて景観に優れ、樹木や草花、野鳥などの自然が身近。
このように自然環境に恵まれていることは、高級住宅地の快適性の評価に関わってきます。
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ハイスペックな住宅が、品位ある街並みに存在してはじめて、”高級住宅”と呼ばれます。
【 高級住宅評価のポイント ③重視される要因:街並み 】
高級住宅地で重視され、価格形成に影響を及ぼす地域の要因について、より具体的に話していきます。
高級住宅地には、高い建築費がかけられた住宅が建ち並び、それぞれが、塀、庭園等を備え、プライバシーが保たれています。
古くからの成熟した住宅地であるため、緑が多く、閑静で、街並みは美しい。
この街並みの状態が良好であるほど、高級住宅地の品位・名声は高くなります。
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中級・普通住宅地と、高級住宅地とで、見方が変わってくる評価要因があります。
【 高級住宅評価のポイント ③重視される要因:ステイタス性と近隣調和 】
住宅地域で一般的に重視される要因には何があるでしょう?
そう、安全性、衛生性、利便性、快適性ですね。
高級住宅地でも安全性、衛生性、快適性は、もちろん重視されます。
ですが、例えば駅や商店等が近くにあるか、といった利便性は、車での移動を前提にあまり重要視されないことが多いです。
さらに、対外的な要因として、先にも触れたステイタスシンボルとしての機能、対内的な要因では近隣との共同体意識や調和という要因が、地域特性の形成に大切で、高級住宅地に特有の要因と言えるでしょう。
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