不動産鑑定士・伊藤由美子です。
これまで2ヶ月超の間、地籍調査についてのブログにお付き合い下さいましてありがとうございました。
昨年来、所有者不明土地の問題がメディアで頻繁に報じられ、不動産登記全般がより注目されるようになっていると感じています。
日本の不動産登記制度はこれからターニングポイントを迎えるのかもしれません。
国土管理というのは壮大すぎるテーマに思えて、どう進めば問題の解決につながるのか途方に暮れるような気持ちになりますが… 今私たちがすぐできることに、相続登記を怠らないこと、そして地籍調査に協力すること、があると思います。
皆さまが地籍調査と向き合うことになられた折、この体験ブログが少しでもお役に立てば幸いです。
日々難しい調整に取り組んでいらっしゃる全国の自治体地籍調査ご担当者の皆さまに感謝申し上げて…
今回のブログシリーズを終わらせていただきます。
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前回まで8回のブログで、地籍調査の開始~終了の実際についてお話しました。
地籍調査のイメージをつかんでいただけましたでしょうか?
今日は地籍調査の成果が反映される書類・図面について確認をします。
地籍調査後の土地に関する重要書類・図面は、
①登記簿
②地籍図(不動産登記法第14条地図)
③一筆座標面積計算書 の3種です。
①と②は、法務局にて取得できます。
③は、地籍調査事業終了の通知とともに所有者に送付されている図面で、区役所での取得が可能です。
①には、地籍調査で確定した土地数量が記載されています。
②は、これまでの公図(地図に準ずる図面)から改められました。
地籍調査が無事に終わって、所有地について精度の高い情報が公的な資料に反映されて、ありがたいです。
仮に地籍調査の結果、筆界未定となってこれを解除しなければならなくなっていたら…どうなることでしょう。
土地家屋調査士さんに聞いてみたところ、
当事者で(土地家屋調査士に依頼して)境界確認を行い、法務局へ地図訂正を申し出る。もし規定の誤差を超える変更となる場合には地積更生登記をしなければならない。
当事者での境界確認がもめる場合は、筆界特定制度や弁護士に依頼しての確定訴訟が次のステップとなる。
…さまざまな手間と費用が発生してしまいます。
ちなみに、しばらく心穏やかで過ごせなくなるかもしれないとしても、
「早くうちの土地も地籍調査の対象にならないかな」と、この調査士さんは常々思っているそうです。
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返答期限を過ぎたあたりで、区から地籍簿・地籍図の閲覧の案内がありました。
今回が誤りの指摘や、異議申し立てができる最後の機会となります。
平成27年10月末から11月にかけての約20日間が閲覧可能期間です。
私は仕事の合間に世田谷区役所へ立寄って成果を確認。閲覧に要した時間は10分ほどでした。
これで地籍調査について土地所有者が取らなくてはならないアクションは全て終わりました。
しかしこの時点ではホッとする心持ちにはなく… 無事に同じマンションの方全員からの筆界案返答書が揃うのかが気掛かりでした。
既に私たちのマンションの隣地所有者の方からは、筆界案返答書の提出がなされて境界について合意が表明されている状況だと伺っていました。
もしもマンション所有者の全員合意が取れず筆界未定となってしまっては…大問題です。
ついに全員合意に至ったのは、平成28年になってからでした。ようやく安心できました!
そのまま時は経過して… 地籍調査事業終了の通知が届いたのは平成29年8月。
世田谷区のご担当者のお話では、東京都・国の認証および承認は順調に得られたものの、登記の段階で、国の機関との調整事項が生じ、その折衝に時間がかかったとのことでした。
もともと2筆だったマンション敷地を地籍調査を機に1筆に合筆していただいており、その調整があったようです。
地籍調査の成果を登記所へ反映するための登記申請から完了までにも1ヶ月半がかかります。
こうして完了した3年がかりの地籍調査プロジェクト、工区全域で筆界未定地は発生しなかったそうです!
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平成27年2月の第2回目立会(一筆地の境界確認立会)の結果を基に、地籍調査の成果となる地籍簿・地籍図の作成が世田谷区によって進められていきます。
私たちマンション所有者(土地共有者)の側では、6月に管理組合の定期総会が開催され、地籍調査が議案に上がりました。
区のご担当者が総会にお越し下さり、いまだ地籍調査について疑問に思うところのある所有者に丁寧な説明をして下さいました。
そしてこの場で地籍調査による私たちの共有地の筆界案についての合意方法としては、原則である全所有者それぞれが筆界案を確認(=署名・押印)して最終合意に至る方法を取ることを確認しました。
マンションではこのような全員合意よりも、総会の場でどなたか(必ずしも管理組合理事長には限定されない)に地籍調査の立会と承認を委任する旨の決を採って、代表合意とすることが多いのだそうです。
代表合意には、管理規約に財産処分に関する内容があるかどうかがポイントとのこと。
さて9月、いよいよ筆界案と合意書の用紙が所有者へと送付されました。
この合意書(筆界案返答書)が揃わないときには、筆界未定となってしまいます!
返送期限は2週間少々先に設定されていましたが… あいにく期限内に私たちのマンション所有者すべてからの返答は集まらなかったそうです。
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前回ブログで取り上げた第2回目立会(一筆地の境界確認立会)で、世田谷区が調査測量した境界位置と土地面積がマンション所有者(土地共有者)へに示されました。
この提示への所有者の反応は…
まず、境界位置についての疑問はほとんど出ませんでした。
一方、測量による土地面積には戸惑いの声が多く上がりました。
土地面積は、
①建築当時の測量面積 < ②現時点の測量面積=今後の登記面積 < ③現時点の登記面積
と判明。
この結果に、少なからぬ所有者の方が、いま登記簿に載っていて課税基礎ともなっている面積(③)と、地籍調査の結果による面積(②)に差(約0.62%減少)が生じることに納得できない、面積が減ると資産価値が減少するのではないかと、困惑していました。
マンションの管理組合理事の方々と私は、状況分析をご一緒しました。
面積に差が生じる理由は、以前のブログ、地籍調査におけるハードル その① ~「面積のズレ」が必ず生じます に書いた事情によると理解できます。
マンション資産価値への影響については、私は以下のような個人的意見を申し上げました。
(1)現在の資産価値に影響はない
地籍調査の結果が登記簿に反映された前後で、それぞれの区分所有建物についての資産価値の変動は起こらない。なぜならば、マンション一戸の売買時に考慮されるのは個別のユニット面積等が中心で、ごく僅かの共有敷地面積の変動が価格形成に影響することはない。
(そもそも物件の現実の状況については登記内容変更の前後で全く同じ。)
(2)将来の資産価値についての影響もほぼない
将来の建替え時には、共有敷地面積は価値要素となるが、将来時点の価値については土地相場の変動やその時点での法規制の状態が大きく影響し、僅少な敷地面積変動は土地相場・法規制の変動と同様、将来不確定要素の範囲と解釈できる。
(今回の地籍調査に伴う測量がなくとも、将来、建替えのための測量がなされ、その時点で測量方法の進歩等によって過去資料にある面積との違いが生じる。)
(3)資産維持コスト(=固定資産税)についての影響もほぼない
今回登記簿上の敷地面積が減ることで、他の条件が同じであれば、固定資産税の金額はマイナス方向へ動く。しかし他の条件は変動する、すなわち土地の評価は3年に1度の見直しがなされる。課される税金の額への影響は、ごく僅かな敷地持分面積の変動よりも、評価の変動のほうがおそらく大きい。よって、個人が受け取る納税通知の金額の段階で、地籍調査による測量で減税になったと実感することはまずないものと思われる。
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第2回目立会(一筆地の境界確認立会)では、測量作業の結果(土地境界の位置や測量数値)について市区町村より説明があり、所有者が現地を確認します。
この立会は大切です。立会拒否状態が続くと、最後には筆界未定に至ってしまいます。
原則は「指定日時に所有者が現地で立会い確認」ですが、日時の調整、代理人による立会い(委任状が必要)、さらには図面・写真送付による確認、とすることも市区町村との相談により可能です。
ですから立会について、都合が合わず無理だ…と思われても、どうぞ通知を放置するのではなく、まずは応答なさって下さい!
ご自身の所有地の境界が決まらないということは、四方を道路に囲まれた土地でない限り、隣人が所有する土地についても境界が決まらないこととなり、その方の資産に悪影響を及ぼすこととなってしまいます。
私たちのマンションの立会は、月曜日の夕方という日時設定で、集まったのは区分所有者の概ね半数というところでした。
まず、区のご担当者とともに一同で土地の境界位置を確認して回り、その後ご担当者から測量による土地面積が示され、最後に質疑の時間が入りました。
立会の開始から終了までは1時間強でした。
同じ工区内には近畿や北陸から立会に来られた方もいらしたそうです。
なお、立会にかかる交通費は、土地所有者負担です。
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説明会に続いて行われる第1回目立会(境界等の事前調査立会)は、測量に入る前に区が民間の資料を収集するための現地立会いです。
境界位置認識についての聴取や、隣地所有者同士での「民-民」境界取り決めに関する書類・建物建築時の図面等の収集を行い、測量の参考情報とするそうです。
(なお、自治体によっては、公的資料のみで測量を進めるところもあるとのこと。)
地籍調査対象地上の我が家はマンションで、第1回目立会は、マンションの管理会社と管理組合により対応がなされました。個々の区分所有者の出番はありませんでした。
市区町村による測量作業は、以下の手順で進みます。
(先月のブログ、地籍調査におけるハードル その① ~「面積のズレ」が必ず生じます に書いた内容を再掲します。)
<観測値を求める>
地籍調査の工区を面的に観測し、全体の面積を求めます。
これには「座標」が用いられます。
「座標」とは、緯度および経度に関連した位置情報で、GPS衛星を利用した高精度の測量技術により求められます。「座標」を土地の各境界点に設定することで、地球規模で位置の特定が可能となります。
<計測値を求める>
土地所有者立会いで確定された境界に基づき、不動産登記簿に登記されている土地ひと筆ごとに、最新の測量技術で計測を行い、一筆ごとの面積を求めます。
<観測値と計測値を調整し、面積を決める>
面的に工区を観測した値に対して、筆ごとの計測値を積み上げた工区全体の値には、どうしてもズレが生じます。このズレを工区内の筆それぞれに割り振る調整を行って、地籍調査による面積を決めます。
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地籍調査の開始にあたり、世田谷区主催の説明会が、平日の夜に2回・休日の午前に1回(すべて同一内容)開催されました。
対象区域の土地の所有者および居住者全員に開催のお知らせが配付され… ていたようなのですが、実は、私は案内書を全く気に留めないでおりました(>_<)
あとになって、世田谷区の地籍調査ご担当・Sさんの前で「お知らせを見た記憶がないのですが…」と小さな声にて呟いたところ、Sさんは「区は都市計画変更や道路整備など色々な説明会の案内をしていますから、このご案内もご自身とは直接関係ないと思ってしまわれる方が多いのですよ」と慰めてくださいました。。。
そうこうあって説明会への参加率は高くないのが現状のようですが、もし皆さまにご案内が来た場合は、万難を排して参加なさることをお薦めします。
はじめに専門の方からの説明を聞き、疑問点について質問できれば、地籍調査の各ステップへの対応がスムーズになると思います。
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FRAコンサルティングの伊藤由美子です。
明けましておめでとうございます。本年もどうぞよろしくお願いいたします。
地籍調査のブログシリーズを、またお届けしてまいります。
昨年の8回のブログでは、地籍調査とは何か、そのメリットとリスク、進捗状況など”地籍調査の概要”についてご説明しました。
今回からは”地籍調査の実体験”をお話したいと思います。
開始から終了まで丸3年(平成26年夏~平成29年夏)を要した地籍調査は、以下のように進みました。
【平成26年】
「地籍調査説明会」(7月)★
↓
「第1回目立会」(9月)★
↓
「測量作業」
【平成27年】
↓
「第2回目立会」(2月)★
↓
「地籍簿・地籍図作成」
↓
「筆界案返答書の送付」(9月)★
↓
「地籍簿・地籍図の閲覧」(11月)★
【平成28年】
↓
「東京都・国の認証、承認を得る」
【平成29年】
↓
「地籍調査の成果の登記」
↓
「地籍調査事業終了の通知」(8月)★
土地所有者が直接関係する項目に★のマークを付けています。
次回より各場面について、世田谷区の担当部局へのヒアリング内容を交えつつ順を追ってお話します。
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旧年中の御愛顧に厚く御礼を申し上げます。
本年もスタッフ一同、皆様にご満足頂けるサービスに誠心誠意努めてまいります。何とぞ変わらぬご高配を賜わりますよう、お願い申し上げます。
皆様のご健勝とますますのご発展を心よりお祈りいたします。
株式会社FRAコンサルティング
代表不動産鑑定士
降矢 等
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