令和2年地価調査(基準地価)が”わかりにくい”理由

2020/10/09

 
不動産鑑定士・降矢等です。

先月末、「令和2年 地価調査」の結果が発表となりました。

東京都の発表内容は以下リンクからご覧いただけます。

「令和2年東京都基準地価格」(出典:東京都財務局)

 
 
Print今回の地価調査の結果は、「わかりにくい」ものであったのではないでしょうか。
 
地価調査地価公示は、土地の取引が適正価格でなされるための指標とすることを目的に標準的土地の地価を調べる公的評価ですが、公表時にもっとも注目を集めているのは、本年の価格時点(地価調査は7月1日)の地価が前年調査時点からどれほど変動したか(変動率です。
 
 
このたび明らかになった各地点の変動率をご覧になって、「なぜこの率なのだろう」と思われた方が多かったようです。

 
 
新型コロナウイルス禍という一年前には考えもつかなかった困難に見舞われ、前年調査と本年調査の間に経済基調が反転しました。

その経緯を、内閣府による景気の基調判断(月例経済報告)で追ってみましょう。
 

昨年7月から本年2月まで 「緩やかに回復している」
3月 「厳しい状況にある」(発表3/26)
4月 「急速に悪化」(同4/23)
5月 「急速な悪化が続ききわめて厳しい状況」(同5/28)
6月 「下げ止まりつつある」(同6/19)

 

一年というタイムスパンで、経済は、概ね2/3の期間は回復傾向、1/3はの期間はコロナ禍、という状態にあったとわかります。
 
地価はそのときどきの経済情勢を前提に形成されますが、その影響は一律に及ぶものではなく、影響の内容や程度は地点ごとに異なってきます。

例えば、新型コロナウイルスの感染拡大により、商業地の人波が途絶えて繁華性は低下しましたが、都心の高度商業地、商店街を成す近隣商業地、郊外型店舗が立地する路線商業地、といった商業地としての性質の違いにより、繁華性低下の期間や商況への悪影響には差がありました。
 
結果として、東京都内で1278ある地価調査の評価対象土地(基準地)について、経済情勢、需給動向、開発計画等が複雑に影響を及ぼし、さまざまな変動率が導き出されています。
 
コロナ禍という突発的な一大事の発生で、変動率の数字からその背景にある経緯を読み解きづらい、地価が一律に上昇基調や下落基調にあるときとは異なる様相となったのが、今回の地価調査でした。
 

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