2018/11/20
不動産鑑定士・降矢等です。
前回ブログテーマの土砂災害は、豪雨や地震によって引き起こされることが多いですが、豪雨がもたらす被害としてより広いエリアで懸念されているのは浸水被害です。
ある公的機関の方から、「近時、各地で大雨による被害が報告されていますが、東京東部の海抜ゼロメートル地帯の土地の市場価格について、水害リスクをどのように考えたらよいでしょうか」とのご質問をいただきました。
私は墨田区・江東区の状況をふまえ、以下のようにお答えしました。
墨田区や江東区はその東部で荒川及び旧中川に面していますが、両区の水害ハザードマップをみると、荒川等が氾濫した場合、墨田区の北部中央~東部にかけて、また江東区の北東部において、5m未満の浸水の可能性があることが示されています。
このような地形的条件による洪水の発生の危険性は、従来より地域のマイナス要因として、その地域の土地価格水準に織り込まれています。
東京東部の土地が、利便性で同等の他地域より相対的に地価が低めに見られるのには、たとえば地域の街並みの良し悪しという要因の考慮が作用しています。
同じように災害発生の危険性も要因として考えられており、これら2つをはじめ複数の地域要因を総合して織り込んだ結果、形成されるのがその地域の価格水準です。
近時において墨田区・江東区で大規模水害は起きておらず、水害リスクについてマーケットでの意識レベルがここにきて価格水準を変化させるほど大きく変わった、との印象を現時点では持っておりません。
ただ、ご承知のとおり、人々が肌で異常気象を感じる機会は年々増えています。
また、東京東部低地帯に位置する江東5区(墨田区・江東区・足立区・葛飾区・江戸川区)は、大規模水害による犠牲者ゼロの実現を目指して「江東5区広域避難推進協議会」を立ち上げ、2018年8月、「江東5区大規模水害ハザードマップ」を公表しました。
同ハザードマップの前提は、”未経験の巨大台風が東京に襲来し、豪雨が発生。荒川と江戸川の同時氾濫がおきて5区のほとんどが水没し、人口の9割以上・250万人が浸水被害にあう”というもので、衝撃が広がっています。
こういった状況を受けて、不動産購入者が水害の危険性をより現実的に捉えるようになった場合には、東京東部ゼロメートル地帯の土地価格と、水害が少ないと想定される地域との土地価格水準の開差が拡大に向かうかもしれません。
・・・少々、専門的な書きぶりとなってしまったかと思います。
もし、ご不明な点がおありでしたら、どうぞお問い合わせ(03-3626-5160)ください。
【ご参考】
江東5区大規模水害ハザードマップ
江東5区大規模水害広域避難計画 リーフレット
(江東区ホームページより)