2018/12/21
降矢です。
誤解されることが多い還元利回り(キャップレート)の本質について、シンプルなモデルを用いてご説明します。
先日のブログでも申し上げましたように、還元利回りは、銀行預金の金利とは本質が異なります。
<金利のモデル>
(銀行預金中。金利は便宜上の設定です)
現金 金利 もうけ
1,000万円 × 1.0% = 10万円
1,000万円 × 2.0% = 20万円
1,000万円 × 5.0% = 50万円
1,000万円 ×10.0% =100万円
というように、元本1,000万円について、銀行に預けてもうけを得るには、金利は高ければ高いほどいい、と言えます。
~~ここで、頭を切り替えてください~~
上記モデルでは、現金という元本の価値が1,000万円と決まっていました。
以下モデルでは、もうけが決まっています。
<還元利回りのモデル>
(前提)
ある人が築年数(使用可能年数)のみ異なり、ほかは全く同じ条件の2つの建物を所有しているとします。(賃貸中)
Aビルはあと10年、Bビルはあと20年で、使用不能・取壊しとなります。
取壊しまで、Aビル、Bビルから得られるもうけは、それぞれ毎年50万円です。
(なお、土地の価値や取壊し費用については考慮しないものとします。)
Step1:不動産の価値
ある人にとって所有する2つの不動産のいまの価値は以下のとおりです。
もうけ 使用年数
50万円 × 10年 = 500万円・・・Aビルの価値
50万円 × 20年 = 1000万円・・・Bビルの価値
Step2:不動産の還元利回り
もうけと不動産価値から、還元利回りを求めてみます。
もうけ 不動産の価値
50万円 ÷ 500万円 = 10%・・・Aビルの還元利回り
50万円 ÷ 1000万円 = 5%・・・Bビルの還元利回り
Step3:還元利回りの意味するところ
AビルとBビルの違いは築年数(使用可能年数)だけで、長く使用できるBビルのほうがAビルより優良な不動産です。
還元利回りは、Aビル10%、Bビル5%で、10%-5%=5%。
Aビルの還元利回りのほうが5%高くなっていますが、この5%は使用可能年数が短いというAビルのマイナス項目にあたります。
ということで、還元利回りが低ければ低いほど優良な不動産である、つまり不動産価格が高い、と言えます。
最初に出した銀行預金の金利モデルのイメージに引っ張られ、還元利回りが高ければ高いほど優良な不動産、と誤解される方は多いです。
しかし、還元利回りが高いということは、築年をはじめ、建物のグレードや、管理・修繕の状況、将来の賃料変動の予測など、さまざまな項目を検討して見積もったリスクが大きい(=不確実性が高い)ことを意味するので、還元利回りが高ければ高いほどハイリスクな不動産なのです。
<還元利回り1%の違いはかなり大きい>
還元利回りの差は不動産価格を左右します。
先ほどのBビルを基準に、還元利回りを1%ずつ変動させてみます。
もうけ 還元利回り 不動産価格
50万円 ÷ 4% = 1,250万円
50万円 ÷ 5% = 1,000万円・・・Bビル
50万円 ÷ 6% = 833万円
還元利回りが1%変化すれば、不動産価格にかなりの違いが出ることがおわかりいただけるかと思います。
皆さまが収益還元法による評価をご覧になったとき、妥当性の判断が最も難しい項目のうちの一つが還元利回りではないでしょうか。
そのような場合には、どうぞ弊社不動産鑑定士にご相談ください。(電話:03-3626-5160)
還元利回りを含む収益還元法・収益価格についてのセカンドオピニオンをご提供いたします。