2019/06/18
FRAコンサルティング代表の降矢等です。
不動産鑑定の世界に入って30年、この間、建築工事費の査定のもととなる建設業界の状況を常に気にかけてきましたが、昨夏からの1年間は特異な年でした。
「高力ボルトの不足」というかつてない事態が、業界を、さらに市民生活を振り回しているのです。
高力ボルトとは、鉄骨を接合するときに使う高強度のボルトです。
リーマンショック後にボルト需要が減少し、高力ボルトの生産体制は縮小していました。
そこに昨今の人手不足を解消する手立てとして、より職人の手が必要となる鉄筋コンクリート(RC)造から鉄骨(S)造への工法変更の動きが生じ、鉄骨をつなぐ高力ボルトの需要が増加。
この需要増へボルトメーカーが対応しきれなくなっていく様子に不安をおぼえた建設会社は、手元在庫を厚くするために、過剰発注をかけるようになりました。
ボルト不足への懸念は、昨秋の時点では、建物工事を発注されている不動産業界のお客さまとの話題にとどまっていましたが、ボルトの不足は日を追うごとに深刻さを増し、2019年に入ってからは社会生活へ負をもたらす心配ごととして広くメディアで取り上げられているのを目にします。
ボルト不足が影響した、災害復旧工事や保育施設新設工事の遅延を耳にすると、胸が痛みます…
国土交通省は、2018年10月、2019年3月とボルトの需要企業・供給企業へ需給調査を行って業界の正常化を促しましたが、状況の悪化は続きました。
先月には発注書のひな型を提示し、工事日時等を明記することで、不安心理からの水増し発注をなくし、契約を適正化するよう要請していますが、まだ問題の収束には至っていません。
通常の鑑定評価業務はもとより、不動産鑑定士協会連合会の「地価調査委員会」の委員として「地価公示業務実施のための運用指針」の策定に携わっている関係で、建築工事費に関する判断をお示しする場面が多くあります。
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東京オリンピック関連の工事需要が山場を越えて、東京都内の建築工事費について今は横ばい基調になりつつあると捉えていますが、これからも、高力ボルトの需給状況や、中国景気の影響による鋼材価格の変動などに注意を払い、適正な建築工事費を見定めてまいります。
建物価格などにつきお悩みがおありの際は、どうぞお気軽にお電話(03-3626-5160 土・日・祝日もお受けします)でご連絡ください。