FRAコンサルティング代表の降矢等です。
 
前回ブログで取り上げました通り、「令和2年 地価調査」が公表され、今年3月以降、新型コロナウイルス感染拡大による経済変動が地域や用途の違いに応じて地価に影響を与えていった状況が明らかとなりました。
 

【関連記事】「令和2年地価調査(基準地価)が”わかりにくい”理由」

 

今回より数回のブログでは、地価調査の価格時点である7月1日以降の都内不動産市場最新動向について、用途ごとにお伝えしてまいります。
 

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本日はオフィス市場についてです。
 
まず、オフィス仲介大手の三鬼商事による東京ビジネス地区(都心5区/千代田・中央・港・新宿・渋谷区)の平均空室率および平均賃料の調査をみてみましょう。
 
 
 
平均空室率は9か月振りに上昇に転じた3月の1.50%から、9月までじわじわと上昇を続けています。8月に30か月振りに3%を突破し、9月時点の空室率は、3.43%(前月比+0.36%)です。
 
そして、7年近く上がり続けてきた平均賃料が、8月ついに下落に転じました(前月比-0.83%、22,822円)。9月時点の平均賃料は、22,733円(前月比-0.39%)で下落続きとなりました。
 

現在の空室率上昇および平均賃料の下落は、主に中型・小型ビルの市況悪化が要因です。

大型のAクラスビル・Bクラスビルについての悪化は声高に語られてはいませんが、一部で賃貸面積縮小の動きがあるといった話は聞こえてきます。

エリア別では、港区(六本木、赤坂など)・渋谷区(渋谷)・新宿区(新宿)に比べると、千代田区(大手町、丸の内など)が安定しています。

なお、弊社が事務所を構える錦糸町では、Aクラスビルもそれ以外のビルも今のところ賃貸状況は落ち着きを見せています。
 

諸外国よりも感染拡大の経済的打撃が少ないこともあって、不動産売買市場への国内外からの投資マネーの流入は細っていません

欧米やアジアの外資系大手不動産投資ファンドは、秋に入り、オフィスビルを含め日本の不動産市場への関心をより強めているようです。
 

金融市場に関しては、不動産業のファイナンス環境はコロナ禍においても安定しており、リーマンショックのときのような金利上昇や貸出収縮は見られていません。
 

以上を総合するに、コロナウイルスとの共存が始まって間もない7月時点(7月14日ブログ「コロナ禍がもたらした不動産用途ごとの影響」をご参照ください)から、オフィス賃貸市場は中小型物件を中心に需要の減退傾向が顕在化してきたものの、投資家心理や金融環境に目立った悪化は認められないため、オフィスマーケット全体としては一定の安定した水準を保ち続けていると言えます。
 
 
オフィスビルの評価では、最新の賃貸市場、売買市場、金融市場の状況を踏まえて、物件タイプやエリアの特性に応じた丁寧な価値判断を行う必要があります。

個別オフィス物件につきましてご相談ごとがおありの際は、どうぞお気軽にお電話(03-3626-5160)にてお問合せください。