不動産鑑定士・伊藤由美子です。

昨今、日本の小売業界全体について、オーバーストアが指摘されるようになっています。
 
オーバーストアとは…

特定地域の消費購買力に対してその地域の小売店舗面積が適正規模を超えている状態をいう。
オーバー・ストアの明確な基準はないが、一般的には小売店舗面積1平方メートル当たりの行政人口が類似都市のそれを大きく上回った状態において使われることが多い。
オーバー・ストアということばが出てきた背景には、大手スーパーなどの急激な店舗展開により、特定都市に集中的に何店もの大型店が出店したり、人口規模の小さな地方都市に大型店が出店したりすることによって、地元の中小小売業の経営に大きな影響を与えるという事態の発生があり、次第に注目されるようになった。

(流通用語辞典より)

 

2b先月、某地方都市の商業地域に出向いた際、このオーバーストアを強く実感しました。
 
市を南北に走る国道沿い1㎞ほどに、大型のスーパーが5店舗ドラッグストアが4店ホームセンターが3店
 
数百メートルごとにロードサイド型チェーンストアが点在して立地し、比較的新しい建物もあるものの、全体としては少々建物に傷みが見られる店舗のほうが多い状況でした。

 

ショッピングモールを形成しているわけではないため、コト消費の要素は少なく、消費者のエリア滞在時間は限定的です。
 
商況の確認を金曜日と土曜日に行ったところ、週末でも各店舗の日中の客数は伸び悩んでいました。

夜の時間帯には家族連れの来店が目につきましたが(工場勤務の方が勤務シフト前後に買物をしているようです)、昼の時間帯の売り上げをカバーするほどではなさそうです。

 

某地域についての厳しい見通しをもって、東京に戻る新幹線の中で日本経済新聞に目を通していると、「日本国内で小売・外食の店舗数が減少・・・店舗増が収益拡大に直結した20世紀型の事業モデルは抜本的な見直しを迫られている」との記事(6/12付朝刊)が目に飛び込みました。
 
某地域にもこの波がいずれ到来するものと思います。

 

人口減少とイーコマース(電子商取引)の伸長が同時進行するなか、商業地についてはそれぞれの土地が所在する地域の現状把握と将来予測を丁寧に行った上での価値判断がますます重要になってきています。

 

商業地の適正価値評価についてご相談を承っております、どうぞお気軽にご連絡くださいませ。
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