立退料
伊藤由美子です。昨日のブログの続きです。
ランチに入ったお店で私が見付けた張り紙は、以下のような内容でした。
皆さま
入居しているビルの所有者が変わり、新所有者さんの要望によりやむなくビルを立ち退き、店舗移転の運びとなりました。
移転先を探しているところですが、当地での営業は、最長で五月中旬までとなります。
近場で移転先が決まればと思っています。よい情報がありましたら、宜しくお願いします。
十年間、ご愛顧賜りまして、有難うございました。
店主
オリジナリティ溢れる美味しいラーメンで、また来たいと思ったのに…ショック。
学生割引があったり、次回使えるトッピング券のサービスがあったり、営業努力にも励んでいらして…
皆さまのご商売を鑑定でサポートできれば幸いです↓
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鑑定士の伊藤です。
昨日のブログで、ベルコモンズや東急プラザを例に、立退きは案外身近にあるもの、と書きました。
立退きに直面し、切実なお悩みを抱えられた方との偶然の出会いについて、今日は書きたいと思います。
奇しくもD社シリーズを書いていた折、私は一日休みを取り、所用を済ませに出掛けました。
久々に訪れたその街は学生街。
随分変わったものだなぁ、と用事のあと少しブラブラしていると…
美味しそうな専門店(ラーメン店ということでお話します)を発見!
そこでランチをすることにしました。
2時近くだったので、私のほかにお客さんはいませんでした。
メニューには趣向を凝らしたラーメンが、目移りするほど色々あります。
じ~っくり悩んで、お店オリジナルの、他では見たことのないラーメンを注文。
こういうとき、私は昔からチャレンジャーで、変わったものを試さずにはいられない性質です。
出てきたラーメンは、期待通り目新しいもの!
また、丁寧な手仕事が感じられてとても美味しく、当たり!!でした。
ウキウキと食べてもうすぐ完食、というところで、私は、店内に数枚の張り紙があることに気が付きました。
張り紙の内容から、明日続けます。
立退きのお困り事あればご連絡下さい↓
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こんにちは、FRAの伊藤です。
「やさしくわかる!不動産鑑定ストーリー」を書くにあたり、代表の降矢と私は、Aさん・Bさんシリーズで家賃交渉、Cさん・D社シリーズで立退料をテーマに選びました。
家賃交渉は、皆さんが当事者となられるケースが最も多いテーマですが、立退料については、え!マイナーな話では?と思われた方もいらっしゃるのではないでしょうか。
でも、実は、立退きは身近なものです。
過去1年を振り返れば、首都圏の皆さんがご存知のビルでは、青山のベルコモンズ、渋谷の東急プラザが閉館となりました。
日本の経済成長に伴い建てられた多くのビルは、更新の時期を迎えています。
また、東京オリンピックに向けて再開発の勢いも増しており、あちらこちらで建替え工事が行われています。
賃貸不動産の建替えの裏には、たくさんの立退きのドラマがあるはずです。
仕事でもプライベートでも、街歩きの途中に取壊し予定の建物を見つけると、ついついテナント店舗の「閉店お知らせ」に見入って、ドラマに思いを馳せてしまいます。
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FRAの鑑定士・伊藤由美子です。
オーナーから立退きを請求され、立退料について争うことになった、D社のストーリーはこれが最後です。
【 和解 】
調査報告書を受け取った日から、もうすぐ一年。
明渡訴訟の担当者として、多くを学んだ一年でした。
これまで数度の口頭弁論、書面のやり取りが行われました。
私たちの立退料4,500万円の主張の根拠となる調査報告書について、裁判所の専門委員から出された意見には、不動産鑑定士が意見書で明解な反論をしました。
そして、動きがありました。
原告である不動産会社の代理人から、和解を希望する連絡が入ったのです。
我が社の社長は、和解に応じる決断をしました。
以後、弁護士を中心に金額の交渉が重ねられ…先日、ついに、立退料3,500万円で和解が成立したのです。
1,200万円が、3,500万円へ!
社長、総務部長、そして私は、専門家の力を借りながら、力を尽くして良かったと心から思いました。
愛着のあるオフィスを移ることに一抹の寂しさはあるものの、これからは前を見るのみです。
部長から、山本くん、次は事務所移転の担当者として頑張ってくれよ、と早速指示があり…私の忙しい毎日はまだまだ続きそうです!
<この項終わり>
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不動産鑑定士・伊藤です。
オーナーから立退きを請求され、立退料について争うことになった、D社のストーリーの続きです。
調査報告書の全ページについて、一同での確認が終わりました。
報告書に附属する資料として、土地の取引事例の比較表、事務所の賃貸事例、各種図面ほか様々な写真が添えられていました。
一連の緻密な分析検討に基づき、不動産鑑定士が導いた適正な立退料の額は、4,500万円。
オーナー側から提示されている1,200万円を大きく上回るものです!
社長も弁護士も、この金額に納得し、顔を見合わせ頷いています。
弁護士は、裁判所提出資料の作成を急ぐ、と力強く言い、明るい雰囲気の中、打合せは終了しました。
<次回に続く>
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FRAの伊藤由美子です。
オーナーから立退きを請求され、立退料について争うことになった、D社のストーリーの続きです。
【 雑費の補償 】
~雑費の補償とは、何ですか?~
これ以前の項目に計上していない、細々した項目についての補償です。
事務所移転及び一時休業の通知費用、各官公庁・東京都・警察署・消防署・同業組合他への届出諸費用、未使用印刷物や名刺・スタンプ等の廃棄損、自社ホームページ改訂費、新事務所オープンセレモニー費用、などを、ここに含めました。
<次回に続く>
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伊藤由美子です。
オーナーから立退きを請求され、立退料について争うことになった、D社のストーリーの続きです。
【 得意先喪失補償 】
~得意先喪失補償とは、何ですか?~
得意先喪失の補償は、前にも申し上げましたように、営業を一時休止することにより、または店舗等の場所を移転することにより、営業再開後の一定の期間に一時的に得意先を喪失し、従前の売上高を得ることができなくなると予想される場合に、低下した売上高が従前と同じ売上高になるまでの間の売上減少相当分に係る限界利益(固定費+利益)に着目して補償するものです。
得意先喪失補償額の算定式は、「補償基準細則」より、
■得意先喪失補償額=売上減少額累計×限界利益率 =従前の1ヶ月の売上高×売上減少率×限界利益率
です。
<次回に続く>
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オーナーから立退きを請求され、立退料について争うことになった、D社のストーリーの続きです。
【 営業休止補償:③従業員の休業補償 】
従業員に対する休業補償は、雇主が負担する従業員の休業手当相当額となります。
ここでいう従業員は、臨時雇用等を除くいわゆる正社員を対象とします。
従業員の休業手当相当額の算定式はこうなります。
■休業手当相当額=年間平均賃金×80/100(※補償率)×1/12×休業期間(補償月数)
※補償率:補償基準細則では、60/100~100/100の範囲内で適正に定めると規定しているが、慣行的には80/100が標準
<次回に続く>
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伊藤です。
オーナーから立退きを請求され、立退料について争うことになった、D社のストーリーの続きです。
【 営業休止補償:②固定的経費の補償 】
~固定的経費の補償とは、何ですか?~
ご承知のとおり、営業活動を行うためには、売上高に変動があっても一定の経費が固定的に必要です。
本来は売上から負担すべきところ、一時的に営業を休止する場合にも経費として支出する必要があることから、この固定的経費は補償の対象となるのです。
固定的経費の補償額の算定式は、
■固定的経費補償額=固定的経費認定額×1/12×休業期間(補償月数)
です。
固定的経費として認定すべき費用については、「補償基準細則」によると、公租公課、電気・ガス・水道・電話等の基本料金、営業用資産の減価償却費及び維持管理費、地代家賃、機械器具使用料、借入資本利子、従業員のための法定福利費・福利厚生費のうちの雇主負担額、賞与、同業組合費、火災保険料、広告宣伝費等となります。
このうちの、地代家賃についてはD社様は不要となりますので、除外します。
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FRAの鑑定士・伊藤由美子です。
オーナーから立退きを請求され、立退料について争うことになった、D社のストーリーの続きです。
【 営業休止補償:①収益減の補償 】
移転にともない、営業を休止している期間に得ることができたであろう純収益相当額を収益減として補償するものです。
もし、赤字経営の場合は休業期間中も赤字と想定されるので収益減の補償は不要となります。
収益減の補償額の算定式は、
■収益減の補償額=年間認定収益額×1/12×休業期間(補償月数)
です。
ここで、休業期間については、「公共用地の取得に伴う損失補償基準細則」で、借家人の規模、業種、設備等の移転期間及び準備期間などを考慮し、2か月の範囲内で相当と認める期間とする、と規定されています。
D社様についてはその規模、営業状況、事務所運営の実際に照らし、移転準備~動産移転~営業再開準備の一連の作業に10日程度を要するものと判断して休業期間を0.3ヶ月と判断しました。
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